離婚協議で話し合わなければいけない問題として養育費があります。大切なお子さまに不自由ない暮らしを送らせるためにも、しっかりと養育費について話し合わなければいけません。
「夫婦で養育費について話し合うときに揉めないだろうか…?」
「毎月、養育費はどれぐらいもらえるのだろうか…?」 「子どもに不自由な暮らしをさせたくないけど、養育費の目安はいくらなのだろうか…?」
このような悩みを抱える方が多いですが、養育費の目安額は計算できます。養育費の目安額を計算しておけば、夫婦で冷静的に話し合うことができるでしょう。この記事では、養育費の目安を把握するために利用する養育費算定表について分かりやすく解説します。
養育費算定表とは
養育費算定表とは、社会情勢を考慮した養育費の目安額を計算する際に参考となる研究書です。東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所の裁判官が研究し、養育費算定表が公表されました。(※2019年12月23日に最新版の養育費算定表が、裁判所の公式ホームページ上で公表されています。)
養育費の目安額を計算する際に利用する研究書となりますが、養育費の金額は夫婦双方の合意で決めるものです。そのため、養育費算定表で計算した養育費の金額は、あくまでも参考金額となります。必ずしも、目安額に従わなければいけないものではありません。
養育費算定表の見方
養育費の目安を計算できる養育費算定表は、どのように使用するのでしょうか?ここでは、養育費算定表の見方について解説します。
STEP1:子どもの条件に該当する表を使用する
養育費算定表は、子どもの人数・年齢に応じたものを使用します。下記の中から、子どもの条件に該当する表を選びましょう。
子どもの年齢 | 養育費算定表 | |
---|---|---|
子どもが1人の場合 | 0歳~14歳 | 表1 |
15歳以上 | 表2 | |
子どもが2人の場合 | 第1子:0歳~14歳 第2子:0歳~14歳 | 表3 |
第1子:15歳以上 第2子:0歳~14歳 | 表4 | |
第1子:15歳以上 第2子:15歳以上 | 表5 | |
子どもが2人の場合 | 第1子:0歳~14歳 第2子:0歳~14歳 第3子:0歳~14歳 | 表6 |
第1子:15歳以上 第2子:0歳~14歳 第3子:0歳~14歳 | 表7 | |
第1子:15歳以上 第2子:15歳以上 第3子:0歳~14歳 | 表8 | |
第1子:15歳以上 第2子:15歳以上 第3子:15歳以上 | 表9 |
(参考元:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」)
STEP2:父親・母親の年収欄を探す
養育費算定表の縦軸は、養育費を支払う親(義務者)の年収で、横軸は受け取る親(権利者)の年収を示しています。縦軸・横軸の外側の数字が給与所得者の年収、内側の数字が自営業者の年収を示しています。給与所得者と自営業者の年収の見方は異なるため注意してください。
給与所得者の場合
源泉徴収票の支払い金額(税金が控除されていない金額)が、給与所得者の年収に該当します。給与明細書には賞与が含まれていないため、源泉徴収票の支払い金額を参考にしてください。また、給与以外にも収入がある場合は、それらの収入も給与所得額に加算します。
自営業者の場合
確定申告書の「課税される所得金額」が、自営業者の年収に該当します。しかし、基礎控除や青色申告控除など、実際に支出されていない費用については「課税される所得金額」に加算します。
STEP3:該当する養育費の金額を確認する
父親・母親の年収欄が交わる部分の金額が、標準的な養育費の金額となります。
養育費算定表を使用した計算事例
養育費算定表の見方を理解できたら、実際に計算をしてみましょう。
【事例1】Aさんのご家庭
子どもの人数 | 2人(満5歳と満12歳) |
義務者の年収 | 給与所得者で年収680万円 |
権利者の年収 | 自営業者で年収300万円 |
- 子どもの条件に該当する「表3」の養育費算定表を使用する
- 縦軸の外側の年収欄から680万円を探す
- 横軸の内側の年収欄から300万円を探す
- 縦軸と横軸の年収欄が交わる「6~8万円」が養育費の目安額となる
【事例2】Bさんのご家庭
子どもの人数 | 1人(満16歳) |
義務者の年収 | 給与所得者で年収1,200万円 |
権利者の年収 | 無所得者 |
- 子どもの条件に該当する「表2」の養育費算定表を使用する
- 縦軸の外側の年収欄から1,200万円を探す
- 横軸の外側の年収欄から0万円を探す
- 縦軸と横軸の年収欄が交わる「18~20万円」が養育費の目安額となる
【事例3】Cさんのご家庭
子どもの人数 | 1人(満12歳、満13歳、満16歳) |
義務者の年収 | 給与所得者で年収500万円 |
権利者の年収 | 給与所得者で年収500万円 |
- 子どもの条件に該当する「表7」の養育費算定表を使用する
- 縦軸の外側の年収欄から500万円を探す
- 横軸の外側の年収欄から500万円を探す
- 縦軸と横軸の年収欄が交わる「4~6万円」が養育費の目安額となる
養育費算定表に関してよくある質問
最後に、養育費算定表を利用して養育費の金額を計算する場合に、よくある質問をご紹介します。
Q.養育費の支払いに応じてくれない場合は?
養育費は、子どもが生活するために必要な費用のことで、衣食住や教育費、医療費、お小遣いなどの娯楽費が含まれています。
離婚後、父親と母親は、各自の経済力に応じて養育費を分担しなければいけません。離婚をしても、親には、未成年の子どもを扶養する義務があり、子どもには扶養を受ける権利があります。
通常は、双方の話し合いで養育費の金額や支払い方法を決めますが、相手が養育費の支払いに応じてくれない場合は、家庭裁判所の調停や裁判で話し合うことになります。
Q.養育費算定表の金額に納得できない場合は?
養育費算定表は、裁判所が研究して公表している表になりますが、最終的には父親と母親の双方が合意した金額が養育費として支払われます。そのため、金額に納得できない場合は、合意する必要がありません。合意をしなかった場合は、家庭裁判所の調停や裁判に進みます。 子どもが病気を抱えており、多額の医療費がかかるなど、正当な理由があれば、養育費の増額が期待できます。しかし、裁判で不服となる結果が出た場合は、それに従わなければいけなくなるため注意してください。
Q.夫婦で話し合える状況ではない場合の対処法は?
夫婦で養育費について話し合える状況ではない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる方法と弁護士に相談する方法があります。
基本的に家庭裁判所に調停を申し立てた場合は、養育費算定表の目安額の養育費が支払われることになります。そのため、希望する養育費の金額がある場合は、弁護士に相談をしましょう。
離婚問題の解決を得意とする弁護士に相談をすれば、養育費だけではなく、医療費や婚姻費用などの請求も代理で行ってくれます。離婚後の暮らしで、金銭的な不安を抱えないためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
Q.自動ツールを使用しても大丈夫ですか
養育費算定表を使用せずに、養育費の目安額が計算できる自動ツールが提供されています。これらの自動ツールを使用すれば、誰でも簡単に養育費の目安額が調べられます。 無償で使用できるツールも登場しており、これらを使用しても問題ありません。とても便利なツールのため、養育費の目安額を簡単に調べられるツールをお探しの方は使用してみてください。
まとめ
養育費算定表は、東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所が共同研究して公表している資料となります。そのため、養育費の金額を決める際に役立つ資料です。まずは、養育費算定表を利用して、養育費の平均相場を算出してみましょう。
しかし、子どもが病気を抱えていたり、専業主婦で離婚を切り出されたりしている場合は、養育費の金額に納得ができないかもしれません。そのような場合は、離婚問題の解決を得意とする弁護士に相談をしてみましょう。
養育費の増額や慰謝料・婚姻費用の請求も代理でしてもらえて、離婚後の暮らしに安心感が増します。そのため、ぜひ、弁護士に相談をしたい方は「相談サポート」をご利用してみてくださいね。