厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、離婚した相手から養育費を受け取っている人の割合は24.3%。約7割強の人が養育費を継続的に受け取れておらず、未払いに頭を悩ませているのです。

「子どものためにも、滞納分を回収することはできるのだろうか…?」

「どのように未払い分の請求をすれば良いのだろうか…?」

「未払い分をまとめて回収することはできるのだろうか…?」

この記事では、養育費の未払い分の回収方法について分かりやすく解説します。

未払い養育費の回収方法

養育費の未払い問題は深刻化していますが、実際にトラブルに巻き込まれた場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか?ここでは、未払い養育費の回収方法について解説します。

電話やメールによる督促

相手側に養育費の支払い意志があるけれど、多忙で振込指定日に振り込みができなかった場合などは、電話やメールによる督促で未払い分の回収ができます。相手側の連絡先が分からなくなってしまって連絡が取れない場合は弁護士に相談をしましょう。

【例文】

いつも養育費の振り込みをして下さって、誠にありがとうございます。毎回、大切に養育費を使わせて頂いています。×月分の振り込みの確認が取れておらず、不安に感じたため、ご連絡をさせていただきました。 仕事などで多忙かと思いますが、娘(息子)にとって、養育費はとても大切なものです。教育費の支払いがある×月×日までに入金をして頂くことはできないでしょうか?お返事をお待ちしております。

内容証明郵便による督促

内容証明郵便による督促であれば、養育費の未払い分を督促した証拠を残すことができます。内容証明郵便は、裁判時の証拠資料となるため、裁判準備を始めていることを相手に知らせることができるのです。そのため、相手に心理的プレッシャーをかけることができ、督促に応じてもらいやすくなります。

例文】

私は、貴殿と令和×年×月×日に協議離婚をしました。協議離婚の際に、貴殿は長男が成人になるまで、毎月5万円を毎月末日に支払うことを約束しました。しかし、貴殿は令和×年×月分からの養育費を一切支払っておりません。

今回、本書を持って滞納分の合計額××万円、毎月5万円ずつ養育費の支払い請求をさせていただきます。つきましては、本書面が到着後、1週間以内に私名義の銀行口座宛に送金をお願い致します。万が一、振込みが確認できない場合は、法的手続きへ移行する予定ですので、あらかじめご了承ください。

養育費請求調停の申し立て

  1. 相手の所在地を管轄する家庭裁判所に申立書と必要書類(子どもの戸籍謄本・申立人の源泉徴収所や給与明細書、確定申告書などの所得が分かる書類)を提出する。
  2. 家庭裁判所が調停日時を決定して、双方に調停期日の呼出状を送付する。
  3. 初回調停で裁判官と調停員が、夫婦各自の意見を聞く。
  4. 調停が月1回のペースで行われて、裁判員によって判決が下される。

履行勧告の申し立て

履行勧告制度が用意されており、家庭裁判所の調停や裁判で取り決められたことを守らない人に対して、家庭裁判所が取り決めを守るように代わりに説得してくれます。履行勧告の申し立て手続きに費用はかかりませんが、相手方が勧告に応じない場合は強制執行することはできません。

強制執行の実施

家庭裁判所には、強制執行の申し立ても行えます。強制執行を申し立てれば、相手方の財産を差し押さえることができます。差し押さえられる分は滞納分のみです。滞納されたことをキッカケに、将来分の養育費を支払ってくれるか心配な場合でも、強制執行では差し押さえることはできません。

確実に未払い養育費を回収するコツ

養育費の未払いが発生した場合に、確実に回収するためのコツがあります。ここでは、確実に未払い養育費を回収するためのコツをご紹介します。

離婚協議時に公正証書を作成しておく

離婚協議時に養育費に関する取り決めをしたら、公正証書に内容を記載しておきましょう。

公正証書(正本)とは、夫婦が合意した内容を公証人が書面にしたものをいいます。この書面に「債務書が公正証書に記載された債務を履行しない場合は、直ちに強制執行に服する」と記載しておくことが大切です。

この公正証書(正本)をお持ちの方は、養育費の未払いが発生した場合に家庭裁判所に申し立てをすれば、債務者の給料や財産を差し押さえることができます。万が一の未払いに備えて、養育費について取り決めた場合は公正証書にしておきましょう。

弁護士に依頼をする

養育費の未払い問題が発生すると、子どもの生活に支障が出てしまうでしょう。電話やメールによる督促で、養育費の未払い分が回収できない場合は、家庭裁判所に養育費請求の申し立てをします。

しかし、家庭裁判所の調停は時間がかかってしまうため、子どもの教育費の支払期限に間に合わないこともあります。このようなトラブルを回避するためにも、離婚問題の解決を得意とする弁護士に相談をしましょう。 離婚問題の解決実績を豊富に持つ弁護士に相談をすれば、どのような方法で未払い分の養育費を請求していくべきかを提案してもらえます。また、家庭の事情によっては、養育費の増額請求などの依頼もできます。

補足:民事執行法が改正されました

民事執行法が改正されて、支払い義務者の財産調査がしやすくなりました。家庭裁判所に対して財産開示手続きの申し立てをすれば、支払い義務者の勤務先の情報が取得できます。給料の差し押さえをする場合、勤務先に裁判所から通達が届くため、相手に大きなプレッシャーを与えることができます。 また、民事執行法が改正されて、金融機関の本店にお問い合わせをすれば、支払い義務者の口座情報や残高情報を回答してもらえるようになりました。そのため、従来と比較すると、養育費の未払い問題は解決しやすくなってきています。

養育費の未払い回収で良くある質問

養育費の未払い問題は、多くの方が経験されています。実際に、養育費の未払いの被害に遭った方から良くある質問をまとめてみました。ぜひ、養育費の未払い回収をする際の参考にしてみてください。

未払い回収を弁護士に依頼する際の料金はいくらですか?

養育費の未払い回収を弁護士に依頼する場合の平均相場は、法律相談が1回1万円、着手金が20万円です。

しかし、弁護士事務所によって料金体系は異なります。弁護士事務所の中には、完全報酬型の料金体系でサービスを提供しているところもあります。

着手金が大きな負担となる方は、完全報酬型の料金体系でサービスを提供している弁護士事務所に相談をしてみてください。

未払い期間が長いため、まとめて請求できますか?

まとめて請求することは可能です。しかし、一定期間が過ぎると、消滅時効を迎えるため、請求できなくなってしまいます。そのため、請求権利が消滅する前に未払い分の請求をしましょう。

【養育費の請求に関する消滅時効】

離婚協議で合意した場合:支払期日から5年

家庭裁判所の調停や裁判で決めた場合:支払期日から10年

上記の消滅時効を過ぎても、養育費の未払い分の請求はできます。しかし、相手から「消滅時効が過ぎたから支払わない」と反論されてしまうと、それ以上は請求することができません。そのため、消滅時効が成立する前に、養育費の未払い分を請求しましょう。

Q.未払い回収の消滅時効を延長できますか?

未払い回収の消滅時効を延長するために起訴提訴する方法もあります。しかし、消滅時効を延長するための起訴提訴は法律に関する知識が必要です。そのため、未払い回収の消滅時効を迎える方は、早急に弁護士に相談をしてください。

まとめ

養育費の未払い分を回収することはできます。さまざまな方法があるため、この記事を参考にしながら請求手続きを進めてみてください。

しかし、養育費の未払い期間が長かったり、早急に養育費を振り込んでもらいたかったりした場合は弁護士に早期に相談をしましょう。弁護士に相談することで、問題の早期解決ができます。 さまざまな弁護士事務所が存在するため、どこに依頼しようか悩んでしまうかもしれません。そのような場合は、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が在籍する「相談サポート」をご利用してみてくださいね。